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■1103号室。霜月みつか「self;control」「Selection」「complex」「少女23区」「雨の日、テトラポッドで」感想

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■self;control
短編集。
http://ameblo.jp/smmt1103/entry-11242845329.html

「電気ウナギ」
不感症に悩む女子の話(違うけど)
女子にも色々あるよなー とか思ってしまう。
色々試したいとか。なかなかオープンにはできないけれど。
まあ、言わせればアレだ。男が下手くそなんだよ。
濡れない女の子にはジェルを使うとか、すりゃいいんだよ。
それを女子のせいにするなんて。けしからん。
そう思った……

じゃなくて、
そもそもまず、主人公は不感症ではなく、男性との性行為が気持ち悪いというものなんだが、
その悩みを生々しくも描いている。
したいのに、できない。
でも、ラストにふっきれた彼女は魅力的だ。


「コントラスト」
面白い話だと思った。三角関係の究極系なのではないだろうか。そして、こういう人もいるんだと、小説の中の話であるのに、そう思った。実際にいると思う。というか……女装男子は、コミケに行けばたくさん会える。
でも、この女装男子の主人公は、心は男であると言うのに、確かに、乙女だった。
こんな青春があっても良い。そう思った作品。


「いつかはみんな死んでいく」
主人公はみつか氏にしては珍しく少女ではない。中年にさしかかろうかというアラフォーの女性。とても意外だった。だから、油断していたのだと思う。この主人公が、少し自分と重なる部分があった。いや、半数近くの女性は重なるのだと思う。
泣きそうになった作品。


■Selection
http://ameblo.jp/smmt1103/entry-11241881231.html
既出の短編集。でも読んだことのない作品がありましたので購入。
まさしく「Selection」選ばれた作品。過去に発行された本の再録集でもある短編集。

「色仕事」
ミナという肌の白い女の夢見る叔父はキャンパスにその肌色を描く。
甥の主人公はその親戚中に嫌われる叔父に接触する。

ちょっと不思議が残るお話。消化不足のような気もする。
叔父さんが哀れでならない。
ロマンチックと基地外は紙一重なのかとも思った。


「厭世旅行(ver.1)」
少女23区の方の教師視点のお話

いそうだよな、こんな教師。
人は、目的や趣味、好きなこと、好きな人がいなくても、生きてはいける。
ただ、虚しさと常に同居だが、それすらも慣れていってしまった人間のお話。
死にたいという教え子がいたら、普通はダメだとか、もっと希望のもてる話をするのが教育者なのだろう。
でも、希望を持っていない主人公はそんな言葉も言えず、また、それを教え子に見透かされていた。
最後の望みは世間の常識というものに阻まれる。
でも、彼はそれすらも受け入れる。
それで得たものは「恋」だった。

得られたものが恋なんて、素敵ではないか。
どれだけの人間が、彼の予備軍であるのだろう。きっと、想像よりも多いのではないかと思える現実。
そういったことを教えてくれたお話。


「幸福なカントフネブレ」
バイト仲間の自殺の原因を求めて、彼の通っていた大学へ潜入し、そこで淋しいという女と出会う。

こういうのは、結構好きだ。潜入とか、どきどきするではないか。
ただ、物語のテーマはそんなことではない。
死んだ人がどんな想いを抱えていたのかは、結局はわからない。
何又もかけている女が原因だったのかもしれないし、そうではなかったかもしれない。
つまらないようなことでも、本人にとってはそうではないのかもしれない。
でも、死んだひとのことを知りたいという思わせる、その故人のすごさ、仲間意識、そんなものを見せてくれた青春物語。


「感情ショートライン」
いじめを受けていた女子を好きになった男子の話。
野ブタもいじめを受けてた女子を好きなるお話だが(厳密には違うのか)
ただ、この女子が死んでしまうという。
主人公は好きでありながらも、彼女をいじめから救うことはできずに苦しんでいた。
本当なら、いじめが良くないものであると知っているのなら、止められるはずなのだが、この恋を知られたくないという葛藤が彼にはあった。
というか、いじめられても凛(?)としている彼女が好きだったのか。
恋心というのは複雑だ。
男子はもうちょっと単純でも良いと思うのだが、これが、思春期のなせることなのだろう。きっと。
だが、彼女は死んでしまう。
彼女を好きだったことも叫ぶ。
これほど、無意味なことはないのではないか。
でも、それしかできなかった。そうしたかった。
彼は、クラスから孤立するかもしれない。
やるせないとも違う。虚しいとも違う。
他人から見たら無意味なことも、彼には意味があったのだと思う。
そんなこともあるのだろう。そういうことを知った。
長く生きてる私の方が、知らないことが沢山ある。
みつか氏は、それを作品で教えてくれる。


「ケサランパサラン」
求めていた「少女像」が、引きこもりの弟だったというお話。
すっごく好きな話だ。
女装男子再び。
くっそ、兄、そこで弟襲っておけよ! とか思ってしまうのは、私が腐っているからだ。
非常に残念……

ではなくて。

もうここまで「少女」に固執する兄も十分変態である。
弟は「男」になっていく自分に絶望を感じているけれど、
大丈夫だ。
理解のない家族なんか捨ててしまえ。
というか、理解しようとしない家族か。
大丈夫だ、永久脱毛もある。ホルモン療法もある。
金はかかるが、どうだ、あのタイのおネエさんどもは。
女としか思えん。

と、応援したくなる話でありました。(違う)

「少女」とはどんなものかを切に説いた話……なのだろうか。
肉体的には限りなく「少年」に近いのかもしれない。
タイトルが意味をよく表していると思う。

でも、ラストは「少女」を捨てた(?)弟と、
同級生の少女に妥協した兄のなんだか微笑ましいシーンで終わる。
素敵な読後感。

みつか氏らしくない話なのかもしれない。
でも、私はこのお話が1番好きだ。

いやいや、もうね、ダメなんだけど、
弟は兄の弱みを握ったも同然だよな……とか。
もう、妙な妄想をしてしまう。私が腐ってるから……
(まあ、逆も然りなんだけどね……)
ともかく、私の脳内では可愛い弟くんの姿がありました。


腐女子は読んでみるといい。



■少女23区
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「少女」をテーマにした短編集
青鈍色(あおにびいろ)/バイト先の店長の家庭を壊そうとする家庭崩壊の少女。
厭世旅行/担任の教師を自己に投影して巻き込もうとする少女
ウメナイキカイ/好きな女の子になりたくてその子の真似で援助交際してしまう少女
ミカエル/美少年に好かれて自分自身を見失う少女
オルガニズム/片目にコンプレックスを抱いた少女
少女観念/いつまでも少女でいたい元・少女


けっこう前に読んだもの。
印象に残っているのは「オルガニズム」かな。
コンプレックスが手間がかかるけれど直せるのなら、必死になる。
私だってミニマムサイズなのは悩みどころだが、どうしようもない。諦めがつくってものだが、そうではないのなら、必死になるだろう。
私の遠縁の子も整形した。それも、まだプチ整形なんて言葉がない時にだ。

コンプレックスというのは、きっと恋をすることで強まるのかもしれない。
恋愛対象の人間に、それを言われたら、こんなやつって怒るのと同時に、直したいと思うだろう。

主人公は、そういうアクティブな人間でもないし、また、必然的に家族も古めかしい考え方を持っている。
それが悪いとは言わないけれど、コンプレックスがなくなったら、どれだけ晴れやかな気持ちになるだろう。
それくらい、重いものだ。

そんな少女の切ない想いが描かれている作品。


「ミカエル」は、いつもと違う一人称で楽しめた。
少女マンガのようなお話。なんだけど、だんだんダークに……
こういうのは私の中にはないので、実はストレスがたまる。

「厭世旅行」もそうだが、「青鈍色」も……
みつか氏の描く中年男性は、暗い……
そういう方がお好きなのかしら……




■COMPLEX
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第13回文学フリマで入手した本。
短い話ばかり集められたもの。
テーマはタイトルの通り。

「人見知り」が中では好きかな。
本当に短い文章の中で、人間をよく描いていると思う。

「わたしは」から始まる文章はテンポもよくて、入りやすい。




■雨の日、テトラポッドで
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第13回文学フリマで入手したもの。

BL小説。(とは言ってはいけないような気がする)
うちのぬるいものとは違って、とてもシリアス。とても重い。でも、これが現実なのだろうというリアル。
私は腐女子ですから、こういうお話は大好きで。
今はおそらく、こういうBL小説は減ってきているので、すごく嬉しい。
私は腐女子ではあるけれど、最近のBL小説はパロディを除き、ほとんど読んでいない。
昔は、こういったシリアスなものが多くて大好きだった。
いや、今のもシリアスはシリアスなのかもしれないけれど、ピンクの表紙を見ると、どうにも精神よりも性に重点を置いているものが多いように思える。
同性愛ものに「性」はあって当たり前なのだが「精神」あっての「性」だと思っている。
そして、同性愛ものの醍醐味(?)と言ったら、やはり「切なさ」なのだろうと思う。
読み進めていくと、切なさでいっぱいになる。

切なさには、ある種の快感があると思っている。
感情移入することで、酔うのだ。
それは切なさとは相反するようなものかもしれないけれど、これが、私の好物である。


何より、ハッピーエンドだったのが救い。
もうね、バッドエンドだったら悲しすぎると、最後の方はハラハラしながら読んでいた。
読ませ方が上手い。


全然、関係ない話だが……
BL小説の多くの主人公、もしくは相手の名前が1文字であることが多い。
(小説の中のキャラクターと言えど、姓名判断を侮ってはならない)
1文字とは、孤独がつきまとう名前だ。

もしかしたら、主人公の「岬」の方が孤独を感じていたのかもしれない。



■総評

みつか氏の描く少女は人形のような美の中にありながら、艶っぽく魅力的である。
そして、陰鬱であるが、内面を素直に表に出している、不器用な少女をも描く。


本当に少女だけで、これだけのものが書けるというのがすごい。

もちろん、少女以外のものを書いても違和感はまったくないのだけれど、
みつか氏といえば「少女」だろうと思う。


前回の文学フリマ(第14回)で出展見合わせとのこと。
パワーアップした作品を読めたらうれしい。


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